第6話 起業準備エピソード「資金調達」編 その1

第6話 起業準備エピソード「資金調達」編 その1

石田宏樹写真
引越し前の荷物のチェックをする石田氏
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こんにちは,石田です。企業のスタートアップにおける最初の壁,それが「資金調達」。今後このコラムでは,重要なテーマに関して数回に分けて,(お話できる範囲で)綴っていきたいと思います。

今回は,FreeBit.Comの資金調達・資本政策についてのポリシーをお話したい。まず最初に,資本政策について以下のポリシーを設定した。

1.独立性を保ち,常に迅速な意思決定を行うために,創業スタッフの持ち株シェアを確保する

2.「色」をつけない為に,プロフェッショナルのベンチャーキャピタルを主要投資家とする

スタートアップの企業は,まず資金がほしいために「調達額」のみを優先してしまい,創業スタッフのシェアを落してしまうことがままあるが,僕の数回の起業の経験から,今回はシェア確保にこだわりたかった。もちろん公開企業を目指す以上,「社会の公器」としての企業の側面も理解しているし,株主のためにも将来的に,株式の流動性を高める必要性は認識している。しかし,業界の激しい変化の中で,迅速に意思決定を行い,柔軟なパートナーシップを展開していくためには,議決権を有していないと,最終的にユーザーやスタッフ,ひいては株主の利益を保つことができないということが,僕の経験から生まれた結論だ。

「シェアを守りつつ調達額を確保する」ためには,一株あたりのヴァリュエーションを高める必要があるが,これも行き過ぎるとまた問題である。数ヶ月前までは,公開前のベンチャー会社の一株(額面5万円)が数百万円以上に高騰した場合もあったようだが,未公開の時点でこのレベルまで価格が上がってしまうと,いざ公開という時期に運悪く株式市場が冷え込んでしまった場合に,公募価格が未公開時のそれを超えることができずに公開自体が延期になることが考えられる。ここはとにかく慎重に対応する必要がある。

実際,FreeBit.Comの場合でも,海外のベンチャーキャピタルの某社が企画書を見てすぐに担当者が飛んでこられて,「45%〜55%の取得ができるのであれば一株はいくら高くても投資したい」というような激しいオファーを頂いたが,上記のポリシーと反するために丁寧にお断りした。

ここで資金調達の教訓
「最初に,起業の目的をはっきりと定義し,それらを実現するための資本政策を作成する」

明確な「起業目的」とその目的を達成する「手段」としての資本政策を事前に作成し,徹底して貫くことがスタートアップ企業にとって大切な姿勢であると思う。資金調達のために起業目的が変化していくと,何のための起業か分からなくなってしまう。どうしても起業目的と資本政策がかみ合わない場合は,一度起業自体を白紙に戻してさらにプランを練り直してみるのも選択肢の一つにしていいと思う。いざ走り始めてから,この部分を調整するのは大変な苦痛が伴う作業となるからだ。

ダイアリー

5月8日(月)
シリコンバレーのベンチャーのCEOとホテルで会談。日本のマーケットにおいての協業を要望される。彼は24歳。若いね!! 夜,旧知のガイナックスの人たちと渋谷でお食事。新しいステップに入ったことを報告。とても楽しい時間を過ごす。

5月9日(火)
FreeBitの売上計画のアップデートを行う。事業が順調だし,新しいビジネスコンセプトもかなり有力であるので非常に明るい見通し。詳細のアクションアイテムをまとめる。事業計画をもとに営業メンバーにカツを入れる。がぜん活気が出てくる。

5月10日(水)
OEM案件に関してのプレゼンテーション。とてもいい反応だった。面白い展開になりそうだな。昼間突然「D502i」が壊れる。無料交換してもらえた。よかったよかった。夜,渋谷で某飲み会に参加。楽しい時間を過ごす。その後,歩いて新オフィスを下見。

5月12日(金)
新ビジネスコンセプトの詳細をまとめる。会社自体の姿を一言で表現できる非常にまとまったビジョンだ。夜,独自Radiusシステムの本格的実験に成功!!