中国企業家[NET進化がもたらす個人のEmpowerment] 2011.02.02 11:56 AM
前回のコラム「競合は誰か?」は多方面から多くの反響を頂いた。
9月28日に、出井伸之前SONY会長が代表をつとめるQuantum Leaps社が主催する
Asia Innovation Forumにおいて、出井氏、インテル日本法人社長(米国vice president)の
吉田和正氏と三人でこのテーマを更に広げて
「Netの進化がもたらす個人のempowerment」という内容でPanel Discussionを行い、
大変興味深い内容であったので、そのサマリーをご紹介したい。
パネルディスカッションはこちらで御覧いただけます。
http://www.youtube.com/watch?v=OKxavOsK6bY
出井氏は、1995年にSONYの社長に就任以来、ネットワーク時代を予見され、
Digital Dream Kidsをスローガンに急速なSONYの改革を行い、VAIO等のPC事業の立ち上げ、
Sony Ericssonの設立、そしてPlaystation2以降のエンターテイメントコンピューターの開発と、
現在のSONYの中心的なITプロダクトを先導された事で、世界的なvisionaryとして知られており、
中国ではBaiduの社外取締役も務められている。
吉田氏は、30年に渡るIntelでの経験により、
IT革命の基礎であるMoore’s Law
(集積回路上のトランジスタ数は18~24ヶ月ごとに倍になること)の
過去と未来を知り尽くした人物である。
(SONYのVAIOによるPC事業参入の際には、Moore氏(Intel設立者のひとり)から命じられて、
Intel側で実際の担当をしていた)
そして私は、internet native世代で、
internet自体の進化に携わってきた人間として、facilitatorを務めた。
ITは進化を遂げているが、
IT革命が本格期に入って来た今から10年前をIT革命の「予感期」と設定し、
そこで予言されたことが実現された今2010年を「実感期」、
そして更に10年後の2020年を「体感期」と設定してみる。
予感期から実感期の10年間においても Moore’s Law(ムーアの法則)は機能し、
実際にCPUの処理速度は175倍に増加した。
10年前に175台のcomputerが必要であった事が1台でできるようになっているということだ。
当然消費電力も減り、space costも減る為にnetworks service costは激減する。
これが現在の主流である、freemiumやcloud computingの「原資」となっているわけである。
予感から実感に変わる一番大きな要因がここにあるわけである。
この時期の競争相手は、大企業 vs venture企業であった。
吉田氏は、「Intelは実感期から体感期にshiftするこれから先10年も
Moore’s Lawを継続していくための技術的な見通しを既に立てている」と語った。
この10年で処理速度は”更に”175倍に上がり、それにともなって、
”更に”computing costは劇的に下がるということだ。
また少し視点を変えると100台以上のserverで運用していたサービスが
1台のSmart Phoneで運用できてしまうようになるかもしれないということだ。
個人が現在のdatacenterに匹敵するcomputing powerをpocketの中にもつことができる時代となる。
”Smart Phone一台での起業”ができるようになる。
まさに、競合相手が venture から 個人 にshiftしていく。
個人が新しいbusiness modelを生み出すだけでなく、
産業自体を生み出すことになるだろう。
10年後の「体感期」を迎えるにあたって、
重要なのがその時代を支えるインフラの変化であると出井氏は語った。
その一つが、教育インフラ。
膨大なcomputing powerを個人が持つ時代になると
その使い方をしっかりと教育することが必要になるということだ。
Intelは既にそれらの長期的な教育プログラムを開始している。
また、SNS等のさらなる発展によって、
個人の情報発信力が増大すると同時に情報収集能力も増大する。
なにより、今までmediaを通して、二次情報、三次情報に触れていたが、
Social Graphのつながりから、一次情報を個人が膨大に取得することが可能になる。
これらをどう消化していくかということも体感期における個人の重要なskillになる。
そしてもう一つが、金融のインフラになる。
そもそも、産業を支えるために生まれた金融システムの力が増大し、
金融が主で産業が従の関係になってしまっている。
個人へのpower shiftによって、
金融のシステムもまた産業を支える従来の形に変化していくかもしれない。
Moore’s Lawによって生み出される膨大なcomputing powerを個人が所有する時代がやってくる。
企業家はそれを見越して、businessを組み立てるべきだろう。
10年後はdatacenterが姿を消し、個人が所有する膨大な数のSmart Phone同士や機器同士が
IPv6によって、直接繋がった究極の分散型computing環境になっているかもしれない。
2/1 IPアドレスを世界で管理するIANAは
最後のIPv4アドレスブロックの割り振りを終了したと
宣言を行った。いよいよ大きなtransformationが始まる。
既存企業はこれを「是」として戦略を組み立てるのがいいのか、
既存businessを守るために「否」として戦略を立てるのがいいのかは、
「予感」から「実感」への10年間の歴史を学ぶと明らかになるだろう。
2000年から現在までのinnovationの変化が、
今後の10年間で「もう一度」起こるのだから。
2000年のmain playerの多くは現在生き残ってはいない。
今後10年も同じことが発生する可能性は極めて高いと言わざるを得ないだろう。
遅すぎることはない。transformationの時が今やってきている。