[中国企業家]IPv4アドレスの中央在庫の枯渇による「四つ目の大発明」が生まれる

[中国企業家]IPv4アドレスの中央在庫の枯渇による「四つ目の大発明」が生まれる

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*日本語掲載の際に一部原文を修正しています

本コラムの執筆を開始して、早3年になる。その中で、何度も「インターネットの発展にあたってのbottle neck」として話をしてきたIPv4アドレスの中央在庫が、2月3日、遂に枯渇した。

世界のインターネットのアドレスを一括管理してきたIANAには、「中央在庫」として、もはや一つのIPv4アドレスも残っていない状態となったのだ。
現在残っているのは「流通在庫」のみとなっているのである。

インターネットの世界では、PCからSmart Phone、センサー等に至るまで、全ての機器に対して電話番号のような世界唯一の番号(IPアドレス)を割り当てることによって動作している。このIPv4アドレスの数は2の32乗個、つまり約43億個存在していたが、遂に枯渇が始まった。

この影響を最も早く受けるのが中国だろう。
インターネット先進国はまだ比較的潤沢な在庫を持っているが、中国にはこの余裕はない。更には、中国は猛烈な勢いでインターネット利用者数が増加し続けているため、来年中には数千万規模のアドレスが不足するだろう。

IPv4アドレスの枯渇に関しては、企業などが「内線電話」を使って電話番号を増やしているような方法で「延命」させることは可能であるし、短期的な視点しか持たない管理者は、そのような対応をしようとしている。

しかし結局これは高コストとなると断言できる。

企業の内線電話は設備が高コストとなるだけではなく、結局利用が面倒なので携帯電話でのダイレクトコミュニケーションにどんどんシフトしつつある。

携帯電話には、一台一台に世界固有の番号(電話番号)が割り振られているために、代表電話番号に電話をかけて内線番号を入力したり、取次を頼む必要はない。
受電する人も相手の番号を見て必要なければ出なければいい。

このような事ができるのも、全ての携帯電話に世界固有の番号が割り振られているからである。

インターネットも、同様である。

繰り返しになるが、来年中国では数千万規模のIPv4アドレスが不足する

中国が、この状況において単なる「延命策」を取るか、漢の韓信のように「背水の陣」を敷いて、IPv4の古い世界を背にして、ほぼ無限のアドレス空間が存在している次世代インターネット(IPv6)に勇気を持ってシフトするかを世界中が注目している。

韓信は部下の進言でこの戦略を思いついただろうか? これは、あらゆるレベルの組織のトップのみが決断できる事案である。担当者に任せてはいけない。

考えてほしい、中国のインターネット普及率は、まだ約40%である。
ということは、「今まで」よりも「これから」が大きいということである。
「今まで」に引きずられて将来を失ってはいけない。

今、積極的にこの分野に進むことで、火薬、活版印刷、羅針盤に続いて、IPv6を利用したM2M(Machine-to-Machine)が、4つ目の歴史に残る発明になることは間違いない。

ソニーに代表される日本企業によって、様々な機器は「デジタル化」された。
そしてその「デジタル化」された機器をAppleがPCと接続させたことで、「ネットワーク化」して価値を増大させた。そして今、第三の波が訪れている。
それは、複雑なPCを介さずに機器と機器が直接ネットワーク化されるM2Mの世界だ。その為には膨大なIPアドレスが必要となる。

この世界において、中国はトップになる可能性がある。
なぜなら中国がIPv4の枯渇によって最もこの技術を必要としているからである。
そして「必要は発明の母」だからである。

中国では、空気や水質の監視といった大規模な環境監視などの分野でのM2Mが盛んであるが、
もっと民間にできるM2M領域も存在している。例えば日本では、象印という魔法瓶のメーカーが
「i-PoT」という製品をリリースしており、これは、一人暮らしのお年寄りの生存を確認するツール
としての利用が想定されている。電気ポットが直接センターサーバーに連絡をして各種対応が
行われる仕組みであるが、日本ではお年寄りが良くお茶を飲むので、毎日電気ポットを使う。

この電気ポットが一日全く使われていない状態だと、もしかしたら病気で寝込んでいるかも
しれないといったことが想定できる。また、体重や体脂肪、血圧計にネットワークが搭載され、
それらの情報が定期的に主治医に毎日送られるというサービスも行われている。

そして主治医ではなくオンラインのシステムと連携して必要な食材が送られるようになる
日も近いだろう。生活習慣の改善や予防医学という分野である。

これらのことを行おうとするとIPv6が必須である。

中国が世界的競争力を発揮するには、今が最大の好機である。

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