第128話 2002年を振り返って

第128話 2002年を振り返って

石田宏樹写真(左)新オフィスビルを背景に気持ちを新たにする石田氏
(右)年内最後のミーティングを主催する石田氏

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毎年感じることであるが,早いもので2002年の連載も今回が最後となる。例年にならって今年も2002年を振り返ってみたい。

1.2002年を振り返って

昨年の日記で(※),「来年はあらゆる意味で「ブレイクスルー」を目指していきたい。前半はその為に考えうる全ての準備を行い,後半に「ブレイクスルー」を迎えたいと思っている。」という事を書いたが,まさにその通りの年となった。自分にとっても,FBにとっても色々な意味で「ブレイクスルー」,別の言い方をすると「Switchが切り替わった」年になった。

自分としては,

・発想の起点のSwitch

30歳を迎えるにあたって今までの人生を振り返ってみると発想の起点が,「一人でできないことを組織でやる」ということにあり,「一人でできないこと」に考えが制限されていたことに気づく。一人でできないことを組織化で実現するのはいわゆる個人商店的発想であり,「組織化には無限の可能性がある」という点を発想の起点とすべきであることを痛切に実感する。

・戦略家/起業家から経営者的思考へのSwitch

「成功すること」と「継続的に成功すること」の違いをしっかと把握できるようになった。正しい戦略を立案するだけでなく,事業開発,組織開発,そして継続的にリーダーを生み出す「システム」の構築がFBにとっての競争力であると定義する。「企業は商品だけでなく,システムでも競合している」

ということがあげられる。これらは自分にとっては「ブレイクスルー」と言っても過言ではない事項であった。

FBの一年を振り返ってみると,下記のようになる。

1月
CIを,「The Internet xEngine.」と定義
長期R&D着手を宣言。分野を定義。

2月 組織開発に着手
事業構造「コアな事業とは?」「永続的な成長とは?」というテーマで明確に定義。

4月
第二期決算,売り上げ15億達成(前年比300%)

5月
SONYとの初プロダクト,Channel Server発売。
非PCのインターネット接続市場を開拓。

8月
ISP Convention2002開催
全国から80を越えるISPにご来場いただく。ISPに対するBuilding Block提供
ビジョンなどの発表。MEXとの提携を発表。

10月
月次で黒字転換達成。
通信事業者として設立2年半での「ブレークイーブン」突破は上々の成績。

11月
SONY CoCoon
Channel Server発表。「成長する製品」のコンセプトに参加。
livedoor再生プロジェクト開始。

12月
社名,組織,オフィス変更
新たなフェーズへ入ったことを宣言。

まさに「前半準備,後半ブレイクスルー」とそのままの年となったことが分かる。

事業は急激に成長していたが,それに伴い「成長の痛み」を感じ始めていたのが今年の前半である。この時期に「成長すること」と「継続的に成長すること」の大きな違いを,経営陣でしっかりと学び,理念をシェアし,日常のオペレーションに忙殺されることなしに,最優先事項として早期に「組織開発」に着手できたことが,継続的成長への土台作りへとつながったのだと確信している。

この「組織開発」に続いて,事業内容についても「FBの強み」を徹底的に抽出し,その「継続的に成長」を支えるシステム作りを行った。このことにより事業内容,運営方法がより一層「シンプル」となり,その後の事業成長に続く大きなエンジンとなった。これらの事業開発の結果,極めて強力な商品群の提供が可能となり,その代表的な例としては,無料ISPのlivedoorの切り替え初月からの黒字化という面でオン・ザ・エッヂ社に協力することができた。これは「無料ISPモデルが利益を出すことができる」という世界始めての事例だと思う。

また,昨年,サービスとしては「PCに依存しないネットワークのかたち」の追求を予測したが,この件に関しても,SONYに協力して

・Channel Server CSV-S55
・[CoCoon]Channel Server CSV-E77

という二つの新しいネットワーク家電の雛形となるモデルを実際に生み出すことができた。この二つはネットワークのライフスタイルを変える「手段」として利用し,インターネットをハードウエアサイドに引き寄せた画期的な商品となっている。この商品のネットワーク分野での我々の貢献は小さくないと自負している。非PC層を「目的型のインターネット」に連れてくる為の大きな一歩を踏み出すことができた。

まとめると,

・FBを「継続的成長」に耐えうるシステムへ変換

・日本のISPを再び利益の出るビジネス構造へ。
→約120社に対してISP運営に必要なブロックを提供
→インターネットユーザーに安定した環境を保証
→ISPは,さらなる成長に向けての準備が可能に

・Made in Japanの家電商品によるインターネットへの取り組みを実現

・先を見据えたR&Dの実行と,商品化。

という一年になったと思う。今年も,明確な実績を残すことができて自分としては大変満足している。

2.2003年に思うこと

2002年を総括したところで,次に2003年の僕から見たインターネットインフラの見通しを述べたいと思う。

ポイント,

・ブロードバンド化への新たなボトルネックへの挑戦
ブロードバンドの成長の為のボトルネックとして想定される点は,電力問題と動画配信に耐えうる安定した帯域確保になるだろう。050が始まることで「常時接続」が「最低条件」となる。その事で,設備の歩留まりも変わり,さらに家庭内に常時接続を支える「常時通電」の機器が家庭で必要になる。Pentiumクラスの機器の家庭内での常時通電が必要になると,電力問題は深刻になるのではないかと思われる。

原子力発電所の稼働率が下がっているために,先日雪が降っただけで,停電の検討がされる状態になっていることも事実である。

処理を分散できる,省電力のルーターユニットの開発を含め,われわれサービスサイドでも省電力を心がけた商材の開発などが必要になるだろう。

更に放送と通信に関する規制緩和の流れを受けて,放送としてインターネットを使う動きが活発になるだろう。その際に,バックボーンがそれらに耐えうる技術を組み入れることができるかということが大きな挑戦となるだろう。

・ユビキタス時代前夜を迎える
さまざまな機器のインターネット対応,UPnPの進化やIPv6の登場によってユビキタスなネットワーク環境が「夜」まで進行するだろう(してほしい)サーバーサイドにストレージを集めての「集中型ユビキタス」から,分散した機器へのアクセスが可能となる「分散型ユビキタス」へ一歩踏み出すと期待している。

ボトルネックを超え,本当にブロードバンド大国になることができたときには,まったく新しいインターネットの使い方が生まれてくるだろう。その転換へのチャレンジを行うのが来年だと思う。

FBは2002年末に「Switch」することができた。黒字化は企業にとって「存続の権利」を得ることができたに過ぎない。「競争に勝つとは時間を稼ぐことができたということ」という盛田昭夫氏の言葉を肝に銘じて,この「稼ぐことができた時間」をいかに先へのステップに結び付けていけるかが来年の我々のチャレンジであると感じている。来年は本当に「勝負の年」となると思う。

今年も一年間ご愛読ありがとうございました。来年もがんばります!

(※)
第35話 2000年を振り返って
第83話 2001年を振り返って

ダイアリー

12月11日(水)
午前中は体調不良により寝込む。午後から復活したので出社。15:00からSONYにて新プロダクトの技術的仕様のヒアリング。それからディスカッション。オフィスに戻って,マネージャーの成果目標面談。マネージャーには四半期での成果目標の設定と評価が義務付けられている。その後新プロダクトに関しての社内ミーティング。夜は「たもいやんせ」にてSONYの方々と忘年会。とても楽しい会になった。体調不良ながらも参加してよかった。

12月13日(金)
午後一番でSONYにて某技術案件に関してのヒアリング。とても画期的な視点だと思う。大崎ゲートシティにて昼食をとって,マネックス証券へ。松本社長にお時間をとっていただきいくつかご相談。出井さんに紹介していただいたのだが本当に気さくに話を聞いてくださり感謝。心に残る一言もいただく。オフィスに戻りミーティング数件。引越しのために夜のうちに藤沢に戻る。先週,コタツやらテレビなどを持ち出したので,部屋の中は寂しい感じ。さらに寒い。。。

12月14日(土)
早めに起きて,ひたすら引越しの準備。久しぶりに力仕事をやったので,へろへろになる。でも,やるしかないのでもくもくと行う。夜は,しなの路にて夕食。奮発して天重を食べる。今日が最後かもね。今日が藤沢宅最後の夜だ。しんみりと一人でビールを飲んで就寝。

12月15日(日)
7:00に起床。最後の荷物の分類を行う。9:00にダック引越しセンターが到着し引越し開始。ものの30分で運び出しが完了。さすがプロ! 逗子宅へ移動して運びいれ。すべてがお昼前に完了。お昼過ぎに木村太郎さん夫妻が訪問され,プレゼントに絵をいただけるとの事。うれしい。夕方過ぎには注文していたWEGAも届きすべてセットアップ完了。新居が完成!21:00過ぎに藤沢宅のルームクリーニングをチェックして,神泉宅へ戻る。23:00過ぎに到着。疲れた。。。

12月16日(月)
本日は休む予定だったが,昼過ぎには出社。体の疲れは全然取れていない。いくつかたまっていた仕事を処理する。その後ミーティングを数件行って,夜は旧くからの知り合いとの食事。お互い変わっていないことを確認してうれしかった。こういう時間は本当に楽しい。

12月17日(火)
午後一番で,次世代のメールシステムに関しての検討会。課題点などを議論。その後経営会議。2時間の時間内にすべての議題が終わらなかったので,翌日再度開くことにする。議論が活発になってきて本当にすばらしい。

12月18日(水)
午前中は戦略メモのまとめ。その後,御殿山ヒルズにてランチを取りながらのミーティング。少し時間が空いたので,一度神泉宅へ戻って逗子宅へ運ぶ荷物の整理をする。夕方IE本部のリソース調整ミーティング。その後,経営会議の第二部。夜は,高橋とキリンシティにて夕食。リニューアルして結構雰囲気が変わっていた。個人的には前のほうが好き。

12月19日(木)
早めに起きて,本日のミーティングの資料の整理を行う。朝一番で某社とのミーティング。その後は,本日の事業説明会の資料の準備。ひたすら準備。夕方数件ミーティング。19:30より社内スタッフに向けた事業説明会。2002年の実績の報告と問題点,理念の共有,そして2003年のロードマップなどをしっかりと全員で共有する。その後は,場所を移して忘年会。月次黒字化達成を皆で祝う。本当に楽しい忘年会になった。